真side

188

 ――六月十日は翼の誕生日。誕生日に有給休暇を取り、子供達が帰宅するのを待ち、久しぶりに三人で外出した。


「家族で食事って、なんかヤダな。パパ、離れて歩いてよね。友達やクラスメイトに見られたら恥ずかしいから」


「は?恥ずかしい?何いってるんだよ。そんなことを言うなら腕を組むぞ。手を繋いでもいい」


「キモッ!バカじゃないの。傍に寄らないで」


「父さん、僕も離れて歩きます」


「はぁー?何で愁まで?さすがに愁と手は繋がないよ」


「中学生にもなって父親と一緒に外出だなんて、誰かに見られたら恥ずかしいですよ」


 なんと、薄情な子供達だ。

 俺がどれだけ苦労して二人を育てたと思ってるんだ。


 この七年、色恋沙汰もなく子供達一筋だったのに。『パパ、パパ』と抱き着いていた頃が、懐かしいよ。


「ねぇパパ。誕生日プレゼントなんだけどさ。あたし雑誌で見たショップにどうしても行きたいの。そこでワンピ買ってよ。ねっ、いいでしょ。みんなそのショップの洋服持ってるんだよ」


 普段は憎らしい口調の翼が、こう言う時だけ鼻にかかった声で甘えてくる。こういうところは奈央によく似ているな。


 女子はたとえ何歳でも、女としての甘え方を身に付けている。我が子ながら末恐ろしい。


「はいはい、ワンピースですね。わかりましたよ。で、どこのブランドだよ?あまり高額なものはダメだからな。予算があるんだから」


「はいはい。麻布に新しくオープンしたショップだよ」


 俺達はディナーの前に、翼のお気に入りのショップで洋服を買うために、わざわざ麻布に行くことになった。

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