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『そんなに自由になりたいの?私と離婚して、子供達を押し付けて、あなたはあの人のところに行くつもりなんでしょう。そんなことはさせないわ』


『奈央……。君は何か誤解をしている。俺はそんなこと、考えたこともない』


『もう嘘偽りはうんざりなのよ』


 まるで別人のような奈央の表情に、俺は呆然とする。


 けれど奈央の決心は固く、クリスマスの翌日、子供達を残し一人で家を出て行った。


 幼い二人を残しふざけるなと、俺は怒りが込み上げる。これから子供達をどうやって育てていけばいいのか、途方に暮れた。


 知人は『奈央や浮気相手に慰謝料を請求するべきだ』と言ったが、俺の両親は世間体を気にし、『親権がこちらにあるなら、あまり騒ぎ立てるな』と釘をさされた。


 ――奈央が家を出て、数日後……。


 俺はクローゼットの中でLITTLE MILKYの紙袋を見つけた。


 紙袋の中に入っていた包みを開けると、二歳児用の赤いパーカーとハンカチ、小さな熊のぬいぐるみが入っていた。


 もう子供達が着るサイズではない赤いパーカー。五年も前に……LITTLE MILKYに?


 何故、こんなものが……?


 箱の中には、一枚のメッセージカードが入っていた。


【ご結婚、ご出産おめでとうございます。お祝いが遅くなりましたが、幸せな家庭を築いて下さい。LITTLE MILKY 代表取締役社長 本宮礼】


 礼さん……!?


 どうして、礼さんのメッセージカードが……。


 奈央は、五年前に礼さんと逢ったのか?


 五年も前からずっと俺達のことを疑っていたのか?


 七年もの間、一緒に暮らしていて、奈央の心の闇に俺は気付けなかった。


 俺や子供達の前で、いつも明るく振る舞っていた奈央。


 俺の心の片隅に燻っている想いが、奈央には見えていたんだ。

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