182
『そんなに自由になりたいの?私と離婚して、子供達を押し付けて、あなたはあの人のところに行くつもりなんでしょう。そんなことはさせないわ』
『奈央……。君は何か誤解をしている。俺はそんなこと、考えたこともない』
『もう嘘偽りはうんざりなのよ』
まるで別人のような奈央の表情に、俺は呆然とする。
けれど奈央の決心は固く、クリスマスの翌日、子供達を残し一人で家を出て行った。
幼い二人を残しふざけるなと、俺は怒りが込み上げる。これから子供達をどうやって育てていけばいいのか、途方に暮れた。
知人は『奈央や浮気相手に慰謝料を請求するべきだ』と言ったが、俺の両親は世間体を気にし、『親権がこちらにあるなら、あまり騒ぎ立てるな』と釘をさされた。
――奈央が家を出て、数日後……。
俺はクローゼットの中でLITTLE MILKYの紙袋を見つけた。
紙袋の中に入っていた包みを開けると、二歳児用の赤いパーカーとハンカチ、小さな熊のぬいぐるみが入っていた。
もう子供達が着るサイズではない赤いパーカー。五年も前に……LITTLE MILKYに?
何故、こんなものが……?
箱の中には、一枚のメッセージカードが入っていた。
【ご結婚、ご出産おめでとうございます。お祝いが遅くなりましたが、幸せな家庭を築いて下さい。LITTLE MILKY 代表取締役社長 本宮礼】
礼さん……!?
どうして、礼さんのメッセージカードが……。
奈央は、五年前に礼さんと逢ったのか?
五年も前からずっと俺達のことを疑っていたのか?
七年もの間、一緒に暮らしていて、奈央の心の闇に俺は気付けなかった。
俺や子供達の前で、いつも明るく振る舞っていた奈央。
俺の心の片隅に燻っている想いが、奈央には見えていたんだ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます