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 数日後、奈央から離婚届けが送られてきた。封筒の中には手紙も同封されていた。


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 真、突然家を出てごめんなさい。


 真との結婚生活は、正直幸せよりも辛かった。


 翼や愁を生むことで、真の心が繋ぎ止められると信じていた。だから子供達を生んだ。


 だけど……それでもだめだった。


 あなたの心の中には、ずっと本宮礼さんがいる。


 最初は、それでもいいと思っていたよ。


 愛されなくてもいい。

 私がその代わりに真を愛せばいい。


 でもそれも限界だった。


 本宮さんと逢い、彼女の人柄に触れ、私は負けたと思った。


 粉々に壊れそうな心を救ってくれたは、子供達でも真でもなかった。


 私なんか誰からも本気で愛されないと思っていたのに。


 彼は私だけを愛してくれた。


 真、私は浮気をしました。

 それは決して許されないこと。


 でも、あなたは心の中で他の人を愛し続けた。

 それは私にとって、浮気と同じくらい許せないことなんだよ。


 私達の結婚は、最初から上手くいくはずはなかった。


 真、私と離婚して下さい。

 あなたが拒否しても、私の意思は変わりません。


 私はあなたから自由になりたい。


 あなたも、私から自由にしてあげる。


 子供達のこと、宜しくお願いします。


 離婚届けは署名捺印したら、区役所に提出して下さい。


 もう私を追わないで下さい。


 さようなら。   奈央


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