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『私……もう疲れたわ。真の気持ちが掴めない。翼や愁のために、離婚すべきでないことはわかっている。だけど……もう無理なの。真の心の中にはあの人がいる。私にはもう耐えられない』


 あの人……?


 奈央の言葉に、礼さんの顔が浮かんだ。


『今も……あの人のことを考えたでしょう。もう……偽りの夫婦はやめましょう。お互い無理をしても、誰も幸せにはなれないわ』


『俺は離婚しない。翼と愁はまだ七歳と六歳だ。どうしても離婚するというなら、子供達は渡さない』


 奈央はフッと口元を緩ませた。


『子供達はいらないわ。親権はあなたにあげる』


『あの二人を、いらないと言うのか。正気の沙汰とは思えない』


『私、好きな人が出来たの。私だけを愛してくれる人。離婚が成立したら結婚しようって言ってくれた。だけど、結婚条件は私一人で嫁ぐこと』


『奈央……まさか……。その男と結婚するために、子供達を捨てるというのか』


『捨てるなんて、酷い言い方しないで。親権はあなたにあげると言ってるだけ。相手は英会話教室の経営者。はじめは、夫婦のことで色々相談に乗ってもらっていたのよ。でも次第にそれが愛情に変わった。私はこれから先の人生を、真ではなくあの人と生きていきたい』


 奈央の口から次々と飛び出す言葉に、俺は愕然とする。子供達を誰よりも愛し、クリスマスイブのホームパーティーも誰よりも楽しんでいたのに、その子供達の親権を俺に渡してまでも離婚したいなんて。


『嘘だろう……』


『ごめんなさい。年内にここを出て行きます。子供達のことを宜しくお願いします』


『奈央……俺に不満があるなら、ハッキリ言ってくれ。突然こんなことを言われても、納得いかないよ。頼む、子供達のためにも、離婚は考え直してくれないか?』

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