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「こら、翼、行儀が悪いぞ」
「しょうがないでしょ。あたしは父親似なんだから」
父親似ってなんだよ。
嬉しい反面微妙だろう。
「翼は女の子なんだからさ、もっと女らしくしろ。愁を少しは見習え、愁は生徒会役員なんだよ」
「は?だから何?意味わかんない。生徒会役員が偉いっていうの?愁がクソ真面目なだけじゃん。黒縁メガネもガリ勉みたいでダサッ。いくら頭が良くても、それじゃ女子にモテないよ」
俺は翼の憎まれ口に、大きく溜め息を吐く。
やっぱり男親だけの子育ては失敗かな。
思春期の娘って、本当に手に負えない。
俺と奈央は翼が七歳の時に離婚した。愁は六歳だった。二人ともまだ公立小学校の低学年だった。
奈央は離婚後、勤務していた英会話教室の経営者と再婚をした。風の噂では子供も二人いるらしい。
◇
――七年前――
クリスマスの夜。子供達が寝静まったあと、奈央が俺に大切な話があると言った。奈央へのクリスマスプレゼントも用意していたが、他に欲しいものがあるのだと単純にそう思った。
『何か買いたいものがあるのか?』
奈央は小さな溜息を吐き俺を見つめた。
『いつもあなたはそうね。私の気持ちなんて理解していない。……真……私と別れて下さい』
『別れる?クリスマスなのに悪い冗談だな』
『冗談じゃないわ。本気よ』
窓の外は雪がちらついている。白い雪が暗闇の中で光っていた。
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