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「奈央、もう腹ペコの虫が我慢の限界だよ。ハグより飯にして」


「……そうだよね。今日は英会話教室も忙しくて残業したんだ。レトルトのカレーとサラダだけどいい?」


「レトルト?だったら自分でするよ。奈央も仕事と子育てで疲れてるだろう。明日も朝早いし、先に寝ていいよ」


「……そうさせてもらおうかな。真、おやすみなさい」


「おやすみ」


 その夜、真は私を抱かなかったね。

 きっとこれから先も、真は私に触れることはないでしょう。


 彼女を縛り付けていた鎖が外れ、自由を手にいれたことを知ってしまったのだから。


 真は昔から嘘がつけない、正直な人だった。


 真は私を子供達の母親として見ているに過ぎない。これからも私を女として見てくれることはないだろう。


 そのうち真は、私も子供達も捨てて、彼女のところに行っていまうかもしれない。


 でもそんなことはさせない。


 彼女が自由になれたとしても、あなたを自由になんてしない。


 真が飛べないように、私が重い足枷をつけてあげる。


 ――真と彼女の恋を邪魔するためなら、私は『悪女』にも『鬼母』にもなる。


 そんな方法でしか……。

 あなたを愛することができないから。


 ――この幸せを誰かに壊されるくらいなら……


 自分の手で壊す。

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