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だってそうだろう。
初めて逢った時、中学生の空はメイクをして露出の多い洋服で、俺を挑発したんだよ。
その空が、もうすぐ大学生になるなんて、あの時、誰が想像をしただろう。
「俺は空が好きです。所属事務所に何と言われても、交際はやめません。交際をやめるくらいなら、モデルを辞めます」
彼は俺にキッパリと言い切った。
眩しいな。
彼の若さも、彼の情熱も、何もかもがキラキラしていて眩しいよ。
「モデルを辞めるのか?それは残念だな。君はモデルの仕事をその程度に捉えているのか?男なら世界に通用するようなモデルになりたいと思わないのか?君が無職になるなら、空との交際は不合格だな。交際は認めない」
「し、真ちゃん!言い過ぎだよ。颯人ごめん。気を悪くしないで。いつもこんな風じゃないんだよ。今日の真ちゃん、どうかしてる」
「空、いいんだ。俺はモデルは辞めない。所属事務所公認で付き合うから心配しないで」
「あたしのせいで颯人の夢を諦めるなんて嫌だからね。あたしもそんな中途半端な男は不合格だから」
「……マジかよ。出直すしかないのかな」
俺は空の兄貴でも家族でもないけれど、空の様子を見ていて、幸せな気持ちになった。
彼の真っ直ぐな気持ち。
好きな女性に『好きだ』と言える勇気。
一途で、迷いがなくて、純粋で……。
俺が礼さんに言えなかった言葉を、彼は十八歳なのに堂々と言ってのける。
彼なら、空を任せられそうだな。
「空……いい人を見つけたな。補欠合格にしとくよ」
「……補欠ですか。ありがとうございます。いつか必ず合格と言ってもらえるように頑張ります」
「……真ちゃん、ありがとう」
本当は補欠合格なんかじゃない。
でも、最初から合格にしたら、彼はもう何の努力もしなくなるだろう。
恋も結婚も、お互いを思いやる努力は必要なんだ。
――よかったな……空。
これで空は、迷うことなく未来に羽ばたいていけるだろう。
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