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人気商品である理由に納得し、値札を見ると……。
「二万五千円……」
あまりの高さに、私は目を疑った。
「本日は開店記念セールで三割引とさせていただいております。子供服にしては少しお高いですけど、そのぶん生地は丈夫で、洗濯機で丸洗いしても型崩れはしませんし、お出掛け用のお洒落着にもなります」
「でもお高いですね。私の主人は塾の講師だから収入も限られてて、これは贅沢だわ」
塾の講師と告げても、彼女の表情は変わらなかった。
「では、こちらは如何ですか?赤いパーカーで、男女兼用になってます」
「これ、いいですね」
「はい。どうぞお手にとって見て下さい」
赤のパーカー。ポケットやファスナーにブルーのラインでアクセントが施されている。シンプルな作りだが、飾りボタンは黄色や緑の星の形になっていて見た目も可愛い。
これなら翼も愁も着れる。
「こちらは、おいくらですか?」
「定価五千五百円の三割引きとなります」
これなら、今月の生活費から買えないことはない。
「これにします。すみません。領収書をいただけますか?」
「はい、ありがとうございます。領収書のお名前はどういたしましょうか?」
「西本でお願いします」
「西本様、ご主人様は塾の講師をされているとか……。もしかして、西本真さんの奥様ですか?」
「ええ、主人をご存知ですか?」
「はい、以前娘の家庭教師をして頂いたことがあるので、その節は大変お世話になりました」
彼女は極めて冷静だ。
その冷静さに私は苛立ちを感じた。
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