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◇
休日、真に子供達を預け美容院に行った。
鏡の前で広げたファッション雑誌を見て、全ての謎が解けた気がした。
そこに掲載されていたのは本宮礼だった。
若者に絶大なる人気があるファッションブランド、MILKYの代表取締役社長であり、本宮corporationの代表取締役社長……?
資産数百億と言われている本宮corporationだよね……。
記事を読み進めるうちに、私は愕然とする。
彼女の夫である本宮氏が七月五日に亡くなっていたのだ。彼女は本宮corporationの代表取締役社長となり、資産の殆どを一人娘と相続をした。
記事は若き女実業家となった彼女を華々しく称え、社長業の傍ら休日には闘病中の夫を献身的に介護したと賞賛されていた。
写真の彼女は眩いほどに美しい。
未亡人となった彼女。
真がこの事実を知らないはずはない。
真の心の中に、再び彼女が入り込んでいると察知した私はメラメラと嫉妬に狂う。
雑誌には、MILKYは若者向けだけではなく、子供服の販売を始めたことが書かれていた。
私は美容院のあと、子供服を取り扱っている『LITTLE MILKY』に行く。新宿のショップは新装開店で大勢の客で賑わっていた。
ショップに入店し、私は二歳児用の洋服を見ていた。新装開店の店内に彼女がいることは確信していた。
「いらっしゃいませ。お客様、お子様は女のお子様ですか?男のお子様ですか?サイズは取り揃えております。よろしければご試着を」
透き通るような美しい声に、私はハッとして振り返る。そこにはあの雑誌の写真と同じ女性が立っていた。
「子供は二歳と一歳。上が女の子で下は男の子です。今日は主人がお休みだから。子守りをしてもらってるの。子煩悩な人なんですよ」
「そうですか。優しいご主人様で羨ましいですね。女の子ならこれは如何ですか?ピンクの花柄が可愛くてポケットもたくさんあるので当店の人気商品なんですよ」
差し出された洋服を手に取る。可愛いピンクの花柄がプリントされたワンピース、ポケットが三つあり、白いレースが襟や裾にふんだんに使われていた。
「可愛い……」
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