141
――千葉――
封筒の住所を頼りに、奈央の実家を尋ねる。
奈央の実家に行くのは初めてだった。
閑静な住宅街、自然豊かな団地に奈央の実家はあった。築年数は古く木造住宅。庭には物干し竿があり、ベビー服やおしめが風に揺れていた。
車を敷地に停め、玄関のチャイムを鳴らす。
玄関ドアは閉まっているのに、家の中から元気な赤ちゃんの泣き声が聞こえた。
――翼……。
胸が締め付けられるような思い。
緊張から鼓動が速まる。
「はい、どちら様ですか?」
玄関ドアが開き、少しふっくらした奈央が俺に驚き、大きく目を見開いた。
「真……どうして?」
「奈央……元気そうだな。翼の認知に来た。区役所に行く前に、翼の顔が見たくて……」
「……ありがとう。わざわざ来てくれたのね。捌けているけど、さあ上がって……」
奈央の目は、すでに潤んでいた。
俺は玄関で靴を脱ぎ、奈央の後を歩く。赤ちゃんの泣き声がする方向に、少しずつ近付いていく。
全身に緊張が走り、鼓動の高鳴りが自分でもわかる。
翼の泣き声を聞いているだけで、すでに胸に熱いものが込み上げた。
「オギャアオギャア……」
赤ちゃんの泣き声が、その想いを加速させる。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます