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俺が父親だと名乗る資格なんかない。
だけど……無事に産まれたと聞いた瞬間、愛しさが込み上げる。
一目だけでいい。赤ちゃんに……逢いたい。
俺にそんな資格はないのだと、そう思う反面、赤ちゃんに逢いたいという気持ちが心を突き動かす。
でも……自分から子供に逢わせて欲しいとは、奈央に言えなかった。
三日後、俺のアパートに奈央から封書が届いた。その中に、可愛い赤ちゃんの写真が一枚入っていた。
写真の裏には、名前が書かれていた。
【
――翼……。
いい名前だね。
――翼……。
ごめんな。
こんな父親でごめんな。
写真を見て、涙が溢れた。
俺は本宮氏と何ら変わらない。
我が子に空と同じ寂しい思いをさせてもいいのか。
産まれながらに、父親のぬくもりも愛情も知らないなんて……全部俺のせいだ。
◇
日曜日、俺は封筒の裏面に書かれた住所を頼りに奈央に逢いに行く。
翼の認知をするためには、父親が嫡出子とする出生届を提出する必要があったからだ。
でも、本当は認知は口実で翼に逢いたかった。
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