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真君のアパートから勤務先の進学塾までは、車で十五分。僅かな時間がとても長く感じられた。
二十分後、真君はすぐにアパートに帰宅した。
室内に入ると、何も言わず私を抱き締めた。
「……心配させないで」
「ごめんなさい……」
「二週間もの間、何処に行ってたんだよ。品川の家にもいなかったし。MILKYに電話しても休みだと告げられた。携帯電話も繋がらないし、どれだけ心配したか……。警察に捜索願いを出すところだったよ」
「本当にごめんなさい。真君、落ち着いて聞いて。私……離婚を取り止めたの。本宮とは別れない」
「別れない……?」
真君が驚いて私を見つめた。今まで見たこともないような、とても悲しい目をしていた。
「二週間前、本宮が倒れたの。くも膜下出血で緊急手術をしたのよ。命は助かったけど、後遺症が残ったの。右半身不随と言語障害、これからリハビリが始まるわ」
「右半身不随……まさか?」
「私と話し合いをしている最中に倒れてしまったの。私のせいだわ。意識は戻ったけど、私が傍にいないと本宮は生きていけない。空も……この状態で置いて行けない。だから離婚は取り止めたの」
「……そんな。俺とのことは……」
「真君……私を助けてくれてありがとう。短い間だったけど、真君には感謝している。でももう……決めたことだから」
真君が大きな体を震わせて泣いた。
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