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空に本宮の付き添いを頼み、私は真君のアパートに向かった。病院以外の場所に行くのは二週間ぶりだった。
タクシーに乗り、真っ直ぐ真君のアパートに行った。預かっていたスペアキーで鍵を開けると、室内には畳まれた段ボール箱もあり、綺麗に整理整頓されていた。
――『新しいマンションを探す』
真君の言葉を思い出す。
午前中は進学塾の授業はない。電話をかけると真君はすぐに電話に出た。
『礼さん、一体何処に行ってたんだよ。ホテルもチェックアウトして、どれだけ心配したか』
電話に出るなり、真君は私を叱りつけた。真君がどれだけ私を心配していたのかが伝わり、胸が苦しくなった。
「仕事中にごめんなさい。真君に大切な話があるの。お昼休みにアパートに戻れない?もし無理なら、私がそちらに行くわ。職場の近くに落ち着いて話ができるカフェでもあればそこでもいいわ」
『大切な話?夜じゃダメなのか?』
「ごめんなさい。あまり時間がないの。すぐに戻らなければいけないから」
『どういうことだよ?まさか……ご主人に行動を見張られているのか?』
「詳しいことは、逢って話したいの」
『わかった。もうすぐ昼休憩になる。アパートに戻るよ。そこで待っていてくれ。何処にも行かないで』
「……うん。待ってる」
真君の声を聞いただけで、涙が溢れ落ちそうになる。
弱虫な私。
数分で意思が揺らいでいる。
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