【13】命

132

 二週間後、本宮は昏睡状態から奇跡的に目を覚ました。目は生気を失い虚ろだったけれど、枕元に座っていた空を見つけるとポロポロと涙を溢した。


 数日後人工呼吸器も外れ、自発呼吸も出来るようになった。呼吸を楽にするため酸素マスクは装着していたが、空を見つめる眼差しは次第に優しい父親の眼差しに戻っていった。


 本宮は医師の診断通り、右半身に麻痺が残り言語機能にも障害が残った。


「……ああ」


 言葉は聞き取れなかったけど、本宮が『ありがとう』と言っているのだと理解は出来た。


 あとは合併症の併発が起きないことと、体力の回復。長期間の入院に加え、身体のリハビリが必要だった。


 私は空と談話室で、今後について話し合った。


「空、パパはもう大丈夫だから。あとはゆっくりリハビリを続けるしかない。空は学校もあるし、大阪に帰りなさい。土日に東京に戻ればいいから」


「うん、そうする。礼……本当にいいの?」


「介護のこと?MILKYは暫く副社長に任せて、パパに付き添うわ」


「……違うよ。真ちゃんのことだよ。連絡してないんでしょう。きっと死ぬほど心配している」


 空に指摘された通り、私は真君と連絡を取っていない。


 MILKYに再三電話があったらしいが、本宮のことは部外者には伏せるように指示していたため、真君にも当然伝えられてはいない。

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