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「……空、ロサンゼルスに行くことにしたの?」
「あたしはロスには行かない!あたしは……日本にいる……」
「……空」
「あたしはパパが大嫌い。礼を殴るパパが嫌い。だから……ナイフで刺そうとしたことも、母に正直に話した。母は『ママのせいだよ。全部……ママのせいだよ』って、泣いていた」
「……空、清華さんも辛かったのよ。我が子を手放して悲しくない母親はいないわ」
「あたしは……礼を本当の母親だと思ってる。あたしと本気で向き合ってくれたのは礼だから。だから……ロスには行かない。そう決めたの」
「……空」
「でも……母の話を聞いて、少しだけパパのことがわかった気がした。だから、パパが元気になったらもう一度向き合ってみるよ」
空は凛とした眼差しで、私を見つめた。
「あたしが記憶していた過去と目の前にある現実は、まったく違うものだった。あたしを捨て、男に走った母。あたしを捨て、女に走った父。ずっと……そう思っていた。でも現実は……。
父と母はあたしの親権を争い、そして父は親権を得たものの、子育ての仕方も愛情のかけ方もわからず、家政婦に子育てを任せてしまった不器用な父親だった。あたしの不器用さはパパに似たんだね」
そう呟いた空の、どこか吹っ切れたような顔に清々しさを感じた。
憎しみしかなかった実母。再会したことで真実を知り、実母の優しさと愛情に触れ、空の頑な心を溶かしてくれた。
そして可愛い妹の存在も、ずっと孤独を感じていた空の荒んだ心を、優しく癒してくれたに違いない。
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