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「空……。明日、学校を休んで東京に戻りなさい」


『東京に?いやだよ。東京にはまだ戻りたくない』


「パパが倒れたのよ。だから……明日の朝、始発の新幹線か飛行機で戻りなさい」


『パパが倒れた?嘘でしょう?この間、電話で少しだけ話したんだ』


「くも膜下出血で倒れたのよ。緊急手術は無事に終わったけど、二~三日が山だって先生が仰有ったわ。だから……パパに会いに来て……」


 空は電話の向こうで絶句した。


『パパ……死ぬの……?』


「危険な状態なのよ。命が助かっても……半身不随と言語障害が残るだろうって……」


『パパが半身不随……嘘……。わかった。明日東京に戻る。どこの病院に入院してるの?』


慶星けいせい大学附属病院のICUだから」


『わかった……。礼……無理しないで。礼まで倒れたら……あたし』


「私は倒れたりしないわ。空、気を付けて帰りなさい」


「……うん」


 空との電話を切り、携帯電話の電源をOFFにした。私はICUの中に入る。術後、自発呼吸が出来ない本宮は、喉を切開し人工呼吸器をつけていた。


 様々な生命維持装置に繋がれ、シューシューと人工呼吸器の音が響く。


 頭部のガーゼは見るからに痛々しく、本宮の顔は浮腫み別人のようだった。


 心電図の音だけが、彼の命を刻んでいた。


 麻酔で眠っている本宮を見て、私は祈った。


 ――神様……


 どうか彼を助けて下さい……。

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