真side

126

 仕事を終えると、いつも礼さんから電話があるのに、その日、礼さんからの連絡はなかった。


 俺は塾の歓送迎会があったため、礼さんが気をきかせて連絡しなかったのだと、そう思っていた。


 時刻は深夜零時、何の連絡も無いことに俺は胸騒ぎを覚える。礼さんの携帯電話に連絡しても、礼さんの携帯電話は不通になっていた。


 不安な気持ちのままタクシーに乗り、本宮の家まで行った。家には本宮氏の外車が停まっていたが、室内の照明はついておらず、チャイムを鳴らしても応答はなかった。


 すぐに宿泊先のホテルに連絡をしたが、礼さんはホテルに戻っていなかった。


 礼さんと連絡がつかないまま、俺は自分のアパートに戻る。


「……どこに行ったんだよ。今日はどこに泊まったんだよ……」


 不安なまま、俺は眠れぬ夜を過ごした。


 礼さん……。


 俺は礼さんを愛している。


 だから……


 俺に黙って……どこにも行くな。


 胸騒ぎがしたが、何の手立てもなく不安だけが募る。


 礼さんの連絡を待ち続け気付けば白々と外が明るくなり始めた。


 ベッドから立ち上がり窓のカーテンを開け、礼さんの声を聞くことなく夜明けを迎えた。

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