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玄関を開け室内に入る。本宮はリビングのソファーに腰掛けていた。テレビの音だけが静かな室内に響いている。
「ただいま帰りました」
「お帰り礼。そこに座りなさい」
「……はい」
私は本宮と向き合って座った。冷静で穏やかな表情をしている本宮に安堵しながらも、緊張は隠せない。
「礼、元気そうだな。早速だが、空はいずれ東京に戻すつもりだ」
「……そうね。いつまでも清華さんのお祖母様にお世話になるわけにはいかないと、私も思っています。ただこればかりは空の気持ちを一番に考えたいの。あの子が落ち着いて生活できる環境を整えたいから」
「そこでだ。離婚は思いとどまってくれないか?そうしてくれるなら、彼とのことは水に流そう。彼を訴えることも慰謝料を要求することもしないと約束しよう」
離婚を……思いとどまれば、真君を訴えることも慰謝料を要求することもしない。
本宮が私達を許せるというの?
私の心は……
もう本宮に向いてはいない。
そんな私を本宮が許せるはずがない。
「私も離婚調停は避けたいと思っています。けれど、離婚をやめることは出来ない。あなたも私をきっと許せないでしょう。私はもうあなたを愛していない。お願いします。私と別れて下さい」
「私を愛していない?」
「空のために、あなたと愛のない生活をやり直すことはできない。空は私が育てます。空が成人するまで、私に養育させて下さい」
今まで冷静だった本宮の表情がみるみる変わった。
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