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 本宮の声は冷静で、とても落ち着いていた。


「二人で……?」


『そうだ。もう一度君と話し合いたい。空のこともあるしな。できれば裁判所の離婚調停は避けたい』


 空のこと……。


 私は本宮と離婚後、空が望むなら引き取ってもいいと思っていた。空の親権は本宮のままで、私が同居し養育をする。空の将来を考えたら、その選択も誤りではない。


「わかりました。今夜、そちらに伺います。空のことで私も話があります。それと……私物を少し持ち出したいので」


『わかった。午後九時には戻る。それでいいな。必ず一人で来てくれ』


「はい」


 電話を切った後、真君に知らせるべきか迷った。


 ――『本宮と二人だけで会わない方がいい』


 真君には、何度もそう言われていたからだ。


 大丈夫……。

 本宮は冷静だった。


 もう暴力は振るわないと、そう言った。


 本宮にも父親の愛情があるはずだ。

 これ以上、空を傷付けたりはしない。


 それに話し合いで解決出来るなら、私も離婚調停は避けたい。


 進学塾で講師をしている真君は、今頃授業中だ。私は真君には知らせず、本宮に会うことにした。余計な心配をさせたくなかったからだ。


 ――午後九時過ぎ、タクシーで品川の自宅に戻った。


 家の明かりはついていて、本宮は既に帰宅しているようだった。私は部屋の明かりに視線を向け、緊張から足が竦んだ。

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