121
本宮の声は冷静で、とても落ち着いていた。
「二人で……?」
『そうだ。もう一度君と話し合いたい。空のこともあるしな。できれば裁判所の離婚調停は避けたい』
空のこと……。
私は本宮と離婚後、空が望むなら引き取ってもいいと思っていた。空の親権は本宮のままで、私が同居し養育をする。空の将来を考えたら、その選択も誤りではない。
「わかりました。今夜、そちらに伺います。空のことで私も話があります。それと……私物を少し持ち出したいので」
『わかった。午後九時には戻る。それでいいな。必ず一人で来てくれ』
「はい」
電話を切った後、真君に知らせるべきか迷った。
――『本宮と二人だけで会わない方がいい』
真君には、何度もそう言われていたからだ。
大丈夫……。
本宮は冷静だった。
もう暴力は振るわないと、そう言った。
本宮にも父親の愛情があるはずだ。
これ以上、空を傷付けたりはしない。
それに話し合いで解決出来るなら、私も離婚調停は避けたい。
進学塾で講師をしている真君は、今頃授業中だ。私は真君には知らせず、本宮に会うことにした。余計な心配をさせたくなかったからだ。
――午後九時過ぎ、タクシーで品川の自宅に戻った。
家の明かりはついていて、本宮は既に帰宅しているようだった。私は部屋の明かりに視線を向け、緊張から足が竦んだ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます