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「それに離婚調停となると、色々話さないといけなくなりますよ。その腕の傷のことも、全て裁判所で話していただくことになります。そんな事をすれば、お嬢様にも出廷していただくことになるやもしれません。本宮氏はお嬢様を自分たちの離婚に巻き込みたくないと仰有っています。お嬢様の将来のためにも、どうか考えを改めて下さいませんか」


「空の将来……」


 私は洋服の上から腕の傷に触れる。


 空の……将来に傷が付く……。


 それは、決してあってはならないこと。


 あの子を離婚調停に巻き込み、これ以上傷付けることは出来ない。


「あなたの地位や名誉のためにも、ゴシップ記事は困るでしょう?御相手は仮にも有名進学塾の講師。子供達を教育する立場の者が、不倫をしていいのでしょうか?しかもかつての教え子の母親と。不倫に関連したお嬢様の傷害事件。これも格好のスキャンダルですよね。それらを踏まえお返事下さい。郵送された離婚届けは取り敢えず、返却致しますから」


 弁護士はテーブルの上に郵送した離婚届けを置き、ソファーから立ち上がった。


 私は離婚届けを見つめ愕然とした。


 ゴシップ記事のスキャンダル。


 真君や空を……

 そんなものに巻き込めないよ……。


 なんとしても、空の傷害事件を表沙汰にするわけにはいかない。

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