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 私が弁護士に依頼するより先に、本宮が弁護士に依頼した。即ち本宮に離婚の意思はない。


 午後、本宮の弁護士から再度電話があり、弁護士と接見することになった。


 MILKYを訪れた弁護士は、社長室に入ると余裕の笑みで名刺を差し出した。まるで本宮の勝訴を確信しているかのように。


「はじめまして、本宮氏の顧問弁護士、垣原玄司かきはらげんじと申します。本宮氏から依頼を受けまして、本宮氏と奥様の離婚の件で伺いました。こちらとしては、まず事実確認をと思いまして。失礼ながら、現在奥様は男性と同棲されてるとか。それは不倫をされていると解釈して宜しいですか?」


「……不倫。私は都内のホテルに連泊しています。同棲なんてしていません」


「そうですか。これは何者かにより本宮氏に送られてきた奥様と御相手の証拠写真です」


 弁護士は私と真君が並んで歩いている写真や、真君のアパートを尋ねた時の写真をテーブルに並べた。


「家庭裁判所で離婚調停となると、奥様は大変不利になると思われますが。本宮氏より莫大な慰謝料等が発生します。それに、本宮氏は長女の空さんのためにも、離婚はしないと仰有っています。奥様がご自分の非を認めご自宅に戻ってくれば、全て許すと仰有っています」


「そんな……先に不倫をしたのは主人です。それに私に暴力も……」


「それは奥様の不倫が原因で、やむを得ず手を上げたと聞いています。本宮氏は、現在自宅に戻られている。娘さんのためにも、夫婦関係を修復する方向で話し合いを進めませんか?」

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