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「もちろん。それより始めから弁護士に依頼した方がよくないか?トラブルになりかねないよ」
弁護士に依頼して離婚調停にでもなれば、本宮のことだ必ず真君とのことを持ち出し私達が不倫関係にあったと騒ぎ立てるだろう。
そして真君の職場に迷惑をかけてしまうだろう。
「取り敢えず郵送してみるわ。あとは夫の出方次第ね」
「そうか。今日は仕事行くの?」
「今日は副店長に任せるわ。電話で指示できるし」
真君は私を抱き締めた。
「くれぐれも二人だけで会わないで。危険だからね」
「……うん」
真君が入れてくれた珈琲に、スプーン一杯の砂糖を入れる。
私は……
この砂糖と同じ、スプーン一杯の小さな幸せを感じていた。
真君が仕事に出かけたあと、私は最寄りの区役所に出向いた。区役所で離婚届けを受け取った私は、その場で署名捺印し、白い封筒に品川の住所と本宮の名前を記入し、郵便ポストに投函した。
愛人と別れマンションを引き払った本宮は、たぶんあの家に戻っているはずだから。
これで全てが終わるとは思っていない。本宮が離婚届にすんなり署名捺印をするわけがない。
とりあえず仮の住まいを探すまでは、都内のホテルに宿泊するしかない。
デパートで当面の洋服や下着を購入し、最低限生活に必要な品を揃える。真君のアパートを出て都内のマンションに身を潜めた。
――離婚の決意を固め翌日からMILKYに出社し、仕事に打ち込んだ。
数日後……。
「社長、今朝から何度も弁護士と名乗る方から電話がありました」
清水に言われ、それが本宮の弁護士だとすぐに理解した。
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