礼side
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大阪の祖母宅に行く空を、新幹線ホームで見送った。空の母方の祖母は、事情を説明すると心よく空のことを引き受けてくれた。
大阪市にある有名私立高等学校の転入もすんなり決まった。
本宮と清華さんが離婚した後も、空は大阪の祖母と交流はあったため、祖母と空の間に蟠りははなかった。寧ろ、祖母は唯一空の良き理解者だったのかもしれない。
空を大阪で暮らすのは、あくまでも長期間ではなく精神状態が落ち着くまで。私はそう解釈していたため、空の意志を尊重し手放した。
駅のホームで見せた顔は、少し不安そうだった。だけど空は自分の事よりも、私の事を気遣ってくれた。
十五歳の子供が心に深い傷を負い、一人で旅立つ。その心中を察すると、私は胸が締め付けられた。
別れの時、空を抱き締めると涙が溢れた。
――空……。
待ってるからね。
必ず……東京に戻って来なさい。
あなたの居場所は……
この東京にもあるんだよ。
永遠の別れではないのに、大人の私が空よりも取り乱し泣いている。
空をここまで追い詰めてしまったのは、母親である私の責任だ。私が本宮の良きパートナーになっていれば、空を大阪に追いやるようなことはなかったのに。
空を見送ったあと、真君に家まで送ってもらった。
車内で真君に告白された私は、動揺を隠せない。真君が私に好意を寄せているとは、思わなかったからだ。
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