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空は処置室に同席し、礼さんの傍で体を震わせていた。
「夫婦喧嘩、親子喧嘩、理由は色々あるだろうが、危険な物を持ち出して、人に向けてはいかん。命はひとつしかないからな。本宮にもそう連絡しておくから心配しなさんな」
医師はカルテを書きながら、ひとりごとのように語った。
その言葉に、空は黙って頷いた。
帰りのタクシーの中、空が重い口を開いた。
「礼……本当にごめんなさい……」
「空、あなたは私を守ろうとしてくれたのね。ありがとう。でもね、あなたはその方法を間違えていた。私は空を守りたかったから、パパを庇ったのよ。パパとはちゃんと話し合うから心配しないで」
「……礼」
「パパは自分の気持ちが上手く言えない人なの。だから口より先に手が出る。でもさっきのことでよくわかったわ。パパは空のことを愛してるんだよ。だから自分がやったことにしろって、罪を被った」
「でも……礼は自分がしたって。あたし、もうパパの顔を見れないよ。あんな酷いことをしたんだから」
「そうね……。暫くは辛いわね……」
「あたし……おばあちゃんの所に行く。ママの……おばあちゃんが大阪に住んでいるんだ」
「清華さんのお母様が……」
「少し……パパと距離を開けたい。そうじゃないと、あたし……また何をするか……」
「そうね。暫く東京を離れた方がいいのかもしれないわ。わかった。学校と相談してみるから。大阪のお祖母様にも私から連絡してみるから、だから私に任せてくれる?」
礼さんは空の手を握り優しく微笑んだ。
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