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「空、その話はもうやめましょう。今日は真君の就職祝いの食事会よ。空も半年お世話になったし、私も真君がいてくれて心強かったわ。ありがとう真君、そして就職おめでとう」


「今日はお招きありがとうございます」


「ワインで乾杯しましょうか。空はオレンジジュースね」


「あたしも高校に進学したんだよ。ワインにしてよ」


「空はまだダメ。ワインが飲みたければ、早く成人しなさい」


「ちぇっ、魔法使わない限りムリじゃん」


 久しぶりに賑やかで楽しい夜を過ごした。

 豪華な手料理と美味しいワインで会話が弾み、俺達は玄関のドアが開いたことに気付かなかった。


 このあと、楽しい時間が一瞬にして凍りつくなんて、考えもしなかった。


 俺達以外いないはずなのに、突然、ダイニングルームのドアが開いた。


「随分と楽しそうだな。一体何事だ」


 その低い声に、礼さんが慌てて椅子から立ち上がる。


 室内の空気は一変した。


「何をそんなに驚いているんだ。私が自分の家に帰ると、そんなに驚くことのか。それとも、私に見られてはまずいことでもあるのか」


「……い……え。あなたお帰りなさい。事前に連絡がなかったので、驚いただけです」


 礼さんは心なしか怯えている。さっきまで笑い声を上げていた空が、黙ってナイフとフォークを置いた。


「……お邪魔しています」


 俺は椅子から立ち上がり、本宮氏に深々とお辞儀をした。


 本宮氏は俺を横目で睨み付けた。


「他人の家で高級ワインを存分に飲み干し、妻や未成年の娘に酌をさせて宴会ですか。いいご身分ですね」

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