98
「男の、は、な、し」
「やだ。男だなんて、元カレなんでしょう」
「向こうが勝手に熱くなって、『別れるなら死ぬ』とか、脅すから嫌気がさしたんだよ」
「元カレにストーカーされてたの?怖い思いをしていたなら、相談してくれればよかったのに。警察に相談しようか?」
「そんなんじゃないよ。あたしの素顔と実年齢を聞いて逃げ出す男だからさ」
「やだ、メイクして歳を誤魔化したりしてないでしょうね。そんなのダメだよ」
空は俺を見て、ペロッと舌を出す。
礼さんは椅子に腰を落としポツリと呟いた。
「空はお母さんに似て美人だもんね」
「まぁね。でも礼はママに似てる」
「私が?」
「うん、雰囲気が似てる。顔立ちもどことなく似てる。だからパパは礼と離婚したくないんだよ。パパが昔、お酒に酔って言ったことがあるんだ。『ママのことを愛していたのに裏切られた』って……」
「パパが……?そう……そんなことを……」
「ねぇ、礼。あたしはもう高校生だよ。マンションで一人暮らしをしてもいい。もうグレたりしない。あたしは大丈夫だから、この家を出て行ってもいいよ。弁護士立てて協議離婚しなよ」
「……空」
「我慢しなくていいんだ。礼はまだ若いし、自分を大切にしなよ」
空は大人びた口調で礼さんに語りかける。礼さんは、そんな空に優しい笑みを向けた。
「空、大人になったわね」
この二人、義理の母娘なのに本当に信頼し合っているんだな。
「大体、真ちゃんがいけないんだよ」
「……はっ?俺?」
突然、空は俺に責任転嫁した。
「いつまでもグズグズしていたら、あたしも困るんだよ。いい加減ハッキリしなよ!礼のことが好きなんだろ」
「な、な、何言い出すんだよ」
俺は空の言葉に慌てている。礼さんも驚いて目を見開いた。
「……や、やだ。空……変なことを言わないで」
「二人とも惚けないでよ。礼だって真ちゃんのことを好きなくせに。二人を見ていたらわかるんだよ。だから……サッサと礼を連れて逃げなよ」
「……まったく、見当違いもいいところだ。俺と礼さんは空が考えてるような感情はない」
俺は空に気持ちを見抜かれて、内心焦っていた。
礼さんがこの俺を好きだなんてあり得ないよ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます