【10】堕天使の涙

真side

96

 四ヶ月振りにあった奈央。


 俺は最低な男だ。


 無責任で、意気地無しで、いい加減な男だ……。


 自分自身の不甲斐なさに嫌気がさすよ。


 俺は奈央に……

 何もしてやれないのか。


 ――『産まれたら知らせてくれ』


 声を絞り出して、そう言うのがやっとだった。


 こんな俺が父親になる資格なんかない。


 まして……礼さんが好きだなんて……。


 奈央を不幸にして、本宮氏から礼さんを奪うなんて……。


 そんな資格なんて、ないんだ。


 ◇


 四月、俺は全国的に名の知れた大手進学塾の講師として就職をした。


 就職後も、実家に戻った奈央のことを忘れた日はなかった。


 空の家庭教師を三月末で辞めた俺は、それでも二人ことが気にかかり、塾の休校日は出来る限り本宮家を訪問した。


 礼さんも空も俺を気持ちよく迎えてくれた。


「真ちゃんがあの有名進学塾の講師ねぇ……。生徒を指導できるの?クラスで最下位のあたしが、内部生トップの成績で附属高校に進学したのは、真ちゃんの指導のお蔭じゃないからね。あれは、あたしの本来の実力を発揮しただけだから」


 高校に進学し一段と大人びた空が、俺を見てニヤニヤ笑っている。本当に生意気で憎らしい。


「はいはい。自覚してるよ」


「だってさ。ねぇ礼。真ちゃんはあたしより英語力劣るんだから」


 空はケラケラと声を立てて笑った。


 空は初めて会った時とは、比較にならないほど性格が明るくなった。

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