95
真は私を見て、驚き、戸惑い、ひどく困惑していた。それは当然のことだ。今さら、『あなたの子供ではない』と、見えすいた嘘はつかない。
数ヶ月振りに会う真。
心の中で何度も『私の方が真を愛してる』と叫びながら平静を装った。
真は『子供を認知する』と言ってくれた。
――『結婚』ではなく『認知』。
真は結婚を望んでくれると思ったが、そうではなく『認知』と言う言葉は事務的に聞こえ正直ショックだった。
私は心のどこかで、真が『結婚しよう』と言ってくれると思っていたから。
――誤算だった……。
真の目に涙が浮かぶ。
泣かないでよ、真。
私より大人なんだから、泣かないで。
あなたが私のところに戻ってくれさえすれば、私はそれだけでいい。
ただ、あなたを愛していた。
今も、あなたを愛している。
これ以上一緒にいると、自分の罪が露見してしまう。その前に、ここから消えるね。
――『真……ありがとう』
本当はね……
二人で赤ちゃんを育てたかった。
でも……それは叶わないんだよね。
私は真に背中を向ける。
『産まれたら知らせて欲しい……』
真は最後にそう言ってくれた。
その一言が、心の暗闇に一筋の光明を差す。
正門前でタクシーに乗車し、小さくなっていく真を見つめた。呆然と立ち竦む真の姿が見えなくなった。
真が私の視界から消え、初めて……笑みがこぼれ落ちた。
私の選択は……
正しかったんだ。
『少しだけさようなら……真……。必ず連絡するからね……』
お腹に触れると、赤ちゃんが微かに動いた。
パパは必ずあなたを抱き締めてくれる。
だから、安心して生まれておいで。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます