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母は、私が未婚の母になることに猛反対した。電話口で、母は泣きながら私を諭した。
『……お母さん……ごめんね。でも産みたいの。お願いします。助けて下さい』
懇願する私に、母がこう呟いた。
『……家に戻って来なさい』
母の言葉を聞いて、張りつめていた糸がプツンと切れた。
涙が溢れ……受話器を握ったまま私は号泣した。
本当は……恐くてたまらなかったんだ。
この先の未来が予想出来なくて、不安で眠れぬ夜が続いた。
許してくれないと思っていた母の優しさに、涙が止まらなかった。
『ありがとう……ありがとう……』
――あの日を最後に、私はもう泣かないと決めた。
この子は、きっと私の救世主となる。
この子は、私が望んだ子供。
命に代えても無事に出産してみせる。
この子は、神の祝福を受けこの世に産まれてくるんだ。
◇
――三月になり、卒業式の日を迎えた。
妊娠七ヶ月目に入ったお腹は、袴では誤魔化せないほど、丸みを帯び大きくなっていた。
真はきっと気付くだろう。
わたしの体形の変化に……。
気付いてくれなければ困る。
もし問われたら、私は真に嘘はつかない。
私は強い決意で、卒業式に向かう。
強い母に生まれ変わった私を、真に見てもらうために。
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