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「……空?」
空の心も礼さんと同じ痛みを感じ、悲しくて悔しくて悲鳴を上げてるのに、空は礼さんのことを案じているのか?
「あたしね、礼のこと嫌いだった。大人はみんな嫌いだと思ってた。だけど……礼は他の大人と違ったんだ。こんなあたしに対等に接してくれた。だから……あんなパパから礼を解放してあげたい。あたしなんか……どうなってもいい。だから礼を、早くここから出してあげて……」
空は一気に喋ると、しゃくりあげて泣き始めた。
反抗ばかりしていても、まだ十五歳の空。大人の身勝手な行動に、空の心は壊れかけていた。
「大丈夫だよ。空を一人にはしない。ちゃんとパパと話し合い、空とパパが一緒に暮らせるようになるまで、私は空の傍にいるからね。だから……泣かないで。みんな空のことを心配しているのよ。だから……泣かないで」
礼さんは、優しく空を抱き締めた。
俺は泣いている二人を見つめながら、涙が溢れて止まらなかった。
誰もが羨む白亜の豪邸の中で、壊れかけている硝子のような心。
俺が……礼さんと空を救いだせたら……。
でも……そんなことが出来るはずもない。
二人をどうすれば守れるのか、今の俺には為す術もなかった。
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