真side
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帰宅すると、奈央の様子が明らかに変だった。
テーブルの隅には、食べ残したコンビニ弁当があった。
まさか、いつも弁当を?
俺が家庭教師の日は、友達と一緒に夕飯を食べていると思っていた。
――『真……自分で気付かないの?』
一体何のことだよ?
奈央の言ってる意味がわからないよ。
――『……ごめん。もう終わりにしたいの』
どうして……?
なんで……?
俺は、奈央が……。
泣いている奈央を抱き締めた。
奈央は俺を拒絶し、頑なに拒んだ。
奈央は俺が本宮家の家庭教師を引き受けたことも、夕食をご馳走になっていることも、理解してくれていると思っていた。
だから俺は本宮家であったことや、空や礼さんの会話の一部始終、食事のメニューや食材に至るまで、事細かく奈央に話したんだ。
奈央だって、興味深く聞いていたのに。
どうしてこうなるんだよ。
――奈央は……
気付いていたのか……。
俺が自分の気持ちを誤魔化すために、自分の気持ちを認めることが怖くて、奈央との生活に終止符を打てないことを……。
俺は……偽善者だ。
――『……真。離して』
俺の手を振りほどき、奈央は泣きながら俺を見つめた。
涙に潤んだ瞳、震える唇。
奈央の真剣な眼差しに、俺はそれ以上何も語ることができなかった。
俺は……
奈央から手を離す。
もうこれ以上奈央を引き止めることは、奈央を苦しめるだけだと、そう感じたから……。
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