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「礼さんはご主人とは?」


 真君が私に問い掛ける。

 この場で、それを聞くかな。


 自分の話を逸らすつもりで発した言葉かもしれないが、本宮の話はしたくない。


「私は……」


 本宮のことを考えただけで、箸を持つ手が震え表情は固くなる。


「いいよ。礼、パパと別れても。ていうか、パパと別れなよ。そしたら自由になれる。こんな家から飛び立てる」


「空ったら、突然何をいうの。私は空と一緒だよ。一人でここから出て行ったりしない。自由になるなら、二人一緒だからね」


「無理すんなよ。あたしと礼は所詮他人なんだから」


 空の投げやりな態度に、寂しさと怒りを感じた。


「空!私は空の母親なの。血の繋がりはなくても、今は母親だからね!忘れないで」


 中学生の空を相手に、私はなぜ向きになっているのだろう。


 空に気持ちを見抜かれているから?

 だから……こんなにも動揺しているの?


 真君が驚いたように私を見つめた。

 私はどんな顔をすればいいのかわからず、視線を逸らす。


「はいはい、わかってます。い、ま、は、戸籍上の母親ね。それって『結婚』に縛られてるだけでしょう。鎖に繋がれて身動きできない籠の鳥だね」


「空!バカなこと言わないで」


「ていうか、真ちゃん。空気読んでよね。真ちゃんがパパのことを聞くから、こうなったんだよ。三十過ぎた大人なんだから、聞いていいことと悪いことくらいわかんないの?」


「は?」


「大人のくせに全然わかってないよ。礼はパパと別れたがってる。でも、あたしのために別れないんだ」


「空、もうよしましょう。それはパパと私の問題だから」


 空のいうとおり、鎖に繋がれた籠の鳥と同じだよ。


 自由に大空を翔びたいのに、籠から出ることもできない哀れな鳥。

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