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 真君が家庭教師になって、この家の雰囲気が変わった。真君と一緒に夕飯を食べるようになり、この家に笑い声が響くようになった。


 私も嬉しかったけど、空も嬉しそうだった。


 本宮といる時には見せない、空の無邪気な笑顔。その笑顔は女性の私から見ても、チャーミングだった。


「真ちゃんは彼女いるの?」


 空の唐突な質問に、チキンカツを口に頬張っていた真君がせかえる。


 ――そうだよね。三十歳の男性に恋人がいても不思議はない。


 真君はわかりやすいな。

 それくらい素直な性格だということ。

 狡い私とは違う、ピュアな部分がある。


「なんだ、いるんだ」


 空が残念そうに呟いた。

 私も少し残念な気持ちになる。


「ゴホゴホッ……。俺も大人だからさ」


「そうだよね。恋人がいて当たり前だよね。彼女は幾つなの?」


 動揺している私。

 どうしてこんなに落ち着かないんだろう。


「同じ大学なので、二十二歳です」


 私より九歳も年下。まだ大学生なんだ。

 きっと可愛い女性なんだろう。

 真君を見ていると、私にはない幸せオーラが伝わってくる。


「ごめんなさい。恋人がいるなんて知らなくて。彼女が寂しがらない?週に三日もここでご飯食べるなんて。本当にごめんなさいね」


 毎回食事に誘うなんて、自己都合だけで真君を束縛し、恋人に申し訳なく思う。


「全然大丈夫ですよ。彼女も内定決まってて、残りの大学生活を友達とエンジョイしたいだろうし、週三日間俺から解放されて自由を満喫してますよ。それに礼さんの料理は、どんなレストランのメニューよりも美味しいし、こんな贅沢ができるなんて、家庭教師やってよかったです」


「だよね。料理は美味いしタダだし、美人二人に囲まれて両手に華だし。真ちゃん、いうことないよね」

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