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「あのさ、春希も鈴も学校に来るようになったんだ。メイクもやめたし、授業もちゃんと受けてる」
「そっか」
「真ちゃん……。真衣のことも、三人で色々話した。あたし達、本当の親友になれるかな」
「きっとなれるさ」
「あたしね、大人はみんな信じられなかった。あたしの父が礼に暴力振るうことも、全部話した。春希は家族に無視されてるって悩んでた。そしたら鈴が『お兄ちゃんが東大だから、あたしだけ、落ちこぼれなんだ』って」
「そうか、みんな悩んでたんだな」
「三人でこんな話をしたのは初めてだった。二人ともあたしと同じように、寂しい思いをしていたんだ」
「みんな心を開けてよかったな」
「もっと早く本音が言えてたら、真衣も違ったのかな……」
「……そうだな」
空の後悔と、心の葛藤。
真衣の死は、今でも三人の心を痛めている。
「春希に『空が変わったのはどうして?って聞かれた。新しい彼氏でも出来たのかって?』そんなわけないのにね」
「空が自分で変わったんだ。人の痛みを受け止めることができたから、変われたんだよ」
空は俺を見上げた。
素顔の澄んだ瞳が俺を見つめた。
「あたしが変われたのは……。な、なんでもない」
空は言葉を濁して俯いた。
少し頰を染めた表情は、初対面の印象とは異なり十五歳の素直な少女だった。
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