【7】秘めた想い
真side
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「でさ、大学四年にもなると、たまに大学行っても、講義を受ける必要ないからずっと大学のカフェで友達とバカ騒ぎだよ」
「ていうか、真ちゃんがバカ騒ぎじゃん。話をしながら食べるなって、親に教育されなかったの?黙って食べてろ」
「は?黙って食べたら、美味いものも美味くなくなるだろ?ワイワイ話しながら食べるから御飯は美味いんだよ」
「さすが一般人だね。テーブルマナーを知らないの?あたし達みたいなセレブな人間からしたら、テーブルマナー違反なんだよ」
「テーブルマナー?へぇ、一人前にそんなこと知ってるのか?ズラリと並んだフォークとナイフを端から使って食べるんだよな」
「礼、下品な真ちゃんと一緒に食事したくない」
俺は二人を楽しませたくて、必死で喋っているのに『下品』とはなんだ。
どうやら、俺のサービス精神が空には伝わらなかったようだ。
ちょっと喋り過ぎたかな。
ふと、前方に視線を向けると俺達を見て楽しそうに笑っている礼さんの視線と重なり、ドキッとした。
不思議な感情にドギマギしながら食事を終え、本宮の家を出た。
「礼さん、今日はご馳走様でした」
「いえ、こちらこそ毎日来てくれてありがとう」
「空、明日から学校頑張れよ」
「……うん、あのさ。今までありがとう。もう……大丈夫だから」
「そっか。空が『ありがとう』だなんて、明日は雨だな。いや、雷雨だな。雷さんが大暴れだ」
「煩い。真ちゃん、さっさと帰れば」
プイッとむくれた空に、礼さんが優しい笑みを向けた。
「もう、空ったら。真君、二週間ありがとうございました。これからは通常通りでお願いします。車に気をつけて帰ってね。おやすみなさい」
「はい、おやすみなさい」
今日一日の最悪な出来事が嘘だったみたいに、別れ際の礼さんと空は穏やかな顔をしていた。
俺はそんな二人を見て、安心してアパートに戻った。
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