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自分の夫に会うのに、メイクをしてスーツまで着て、まるで接客するみたいだ。
どうして夫に会うのに、あんなに緊張してるんだよ。
なんで、あんなに不安な目をしてるんだよ?
いつもの穏やかな笑顔はそこにはなく、心が凍りついているみたいだった。
礼さん……。
礼さんのことが気にかかる。
礼さんの夫、空の父親は一体どんな人なんだろう。妻がいながら不倫をし、愛人宅で暮らすなんて尋常の沙汰じゃない。
離婚したいなら協議離婚すればいいだろう。
礼さんをこの家に縛り付けるみたいに、離婚はせず自分は平然と浮気をするなんて、男の風上にもおけない。
苛立ちを感じながら、空の部屋に入りドアを閉めた。
「真ちゃん、あたしね、明日から学校いくよ」
「学校?そうか」
「勉強が遅れたから。少し教えてくれる?」
「わかった。じゃあ教科書出して」
「うん」
空が部屋の隅から教科書を取り出す。俺はその間も、リビングにいる礼さんの様子が気にかかっていた。
「真ちゃん?どうかした?」
「あっごめん。学校休む前、どこまで授業進んでた?」
「真面目に授業受けてないから、大体でいい?」
「いいよ。空は学力高いし、少しくらいの遅れはすぐに取り戻せる。じゃあ、数学からやろうか」
「……うん」
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