【6】壊れた家庭

真side

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 真衣が亡くなって二週間、家庭教師がない日も俺は連日本宮家に通った。ずっと部屋に引き篭もっていた空は、一週間前に真衣の日記帳を受け取り、真衣の本心を知ることで自分の気持ちを奮い立たせることができるようになり、日常生活を送れるようになった。


 真衣の死を受け入れられず学校を休んでいた春希と鈴を説得したのは、意外にも空だった。


 玄関のチャイムを鳴らすとインターフォンでの応答はなく、直ぐさまドアが開いた。そこにいたのは礼さんではなく空だった。


 メイクをしていない素顔は、美少女ではあるがまだ幼さを残した十五歳。その顔は青白く不安な気持ちが表情から見てとれる。


「こんばんは。空、元気そうだな」


「元気なわけないだろ。毎日会ってるくせに、一晩で変わらないよ」


 空が俺に憎まれ口を叩く。空らしい口調に俺は内心ホッとしている。空の苦悩に歪んだ泣き顔は見たくないから。


「真君、いらっしゃい」


 リビングから出てきた礼さんは、メイクをしスーツ姿だった。


 メイクをした礼さんと、素顔の空。これが歳相応の姿なんだよな。でも、その逆を見慣れてしまった俺には不思議な光景だった。


「こんばんは、礼さん今日はMILKY定休日ですよね?今から外出されるのですか?」


「今日は主人が帰ってくるのよ。さっき連絡があったの」


「ご主人?それでわざわざスーツを?」


「そうね、家にいるのにおかしいわよね。家庭の事情が色々あるのよ。真君、空のことで毎日ありがとう。でももう空は大丈夫。だから忙しい時は無理しなくていいよ。これも全部真君のお陰ね」


「いえ……。俺は何も……。それに今日は家庭教師の日ですから」


「やだ。そうだったわね。毎日会ってるから、曜日がわからなくなってたわ。どうぞ上がって」


「はい。お邪魔します」


 愛人宅で暮らす夫が帰宅するだけで、緊張している礼さん。浮かない横顔を気にしながら、俺は空と二階に上がる。

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