55
◇
――翌日の新聞に真衣の事件が載った。
テレビのニュースでも、義父の家庭内暴力が取り上げられた。
司法解剖と義父の証言、真衣の日記帳により日常的な家庭内暴力があったことは判明したが、死因はテーブルで頭を強打したことによる外傷性脳出血だと判明した。
真衣の葬儀から一週間後、真衣の姉が空に一冊の日記帳を手渡した。そこには空達と過ごした日々が、毎日のように綴られていた。
そして最後のページには……。
―――――――――
夜、お父さんにリビングに呼ばれた。お父さんはすでにお酒を飲んでいた。お酒さえ飲まなければ、優しいお父さんなのに、お酒を飲むとお父さんは人格が変わる。
学校の定期テストや進学塾の模擬テストの成績不振の叱咤から始まり、服装の乱れやメイクをしていたことを咎められ、お父さんに平手で数回殴られた。いつもの私ならすぐに謝って許しを請う。でも今日はお父さんに謝らなかったよ。
空、春希、鈴。
私ね、お父さんに言ったんだ。
『お父さんお願い。もう殴らないで』って。
そしたら、お姉さんが初めて私を庇ってくれたんだ。
お父さんが『リビングから出て行け!』って、ドンって肩を突き飛ばした。私の体はぐらつきリビングのテーブルの角で頭を打った。でも、気力を振り絞って部屋に戻った。
私を庇ってくれたお姉さんに心配させたくなかったから。
日記を書いていたら……
殴られた頬よりも、頭痛がしてきた。
空……。
私の頭の中、壊れてしまったのかな。
空……。
頭が痛くて、字が霞んで見える。
私が自分で転んだんだ。
だから、お父さんは悪くない。
もしも何かあっても、お父さんを責めないで。
――空、春希、鈴……。
やっと……
友達ができたのに……。
やっと……
友達になれたのに……。
仲良くしてくれて、ありがとう……。
あり……
―――――――――
真衣の日記の文字は乱れ、途中で終わっていた。
空はその日記帳を胸に抱き、声を上げて泣いた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます