54

「お父さんが連行され、真衣のお姉さんがあたし達に声を掛けてくれた。真衣のお姉さんは、昨日の夜酒に酔った父親が、真衣に暴力を振るったと、あたし達に話してくれた。父親の暴力は日常的で、再婚するまでは兄や姉が暴力を受けていたらしい。お姉さんは父親の暴力が真衣に移ったことを知っていたけど、恐くて止めることが出来なかったと涙ながらに話した」


「警察に通報したのは、真衣ちゃんのお姉さんだったのか」


「お姉さんは『父の過ちを認めなければ、真衣の死が無駄になる』って……」


「お姉さんは勇気を出して通報したんだね。父親の罪を認め、暴力を止めることが出来なかった自分を責めていたんだろう。空も春希ちゃんも鈴ちゃんも自分を責めなくていいんだよ」


「……真ちゃん。あたし達が真衣を殺した。あたしが……真衣を殺した。あたしが……」


 俺は泣き崩れた空を抱き止めた。

 自分が何を言っても、今の空には無力な気がして、震える体を抱き締めてやることしか出来なかった。


 自分の行動を責め、友達の死を受け入れられないでいる空。その深い悲しみを俺はどう受け止めてやればいいのか……。


 少し開いたドアの向こう側に礼さんが立っているのが見えた。礼さんは涙を溢しながら空の話を聞いていた。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る