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「『いつも一緒にいてくれてありがとう』って、言ったんだ」
「……そうか」
「それから、『お父さんと話し合ってみる。もう殴らないでって、言ってみるよ』って」
「空……」
「あたしは真衣の眼鏡を外して、青くなった目尻にファンデーションを塗った。痣が目立たなくなるように。春希が真衣のスカートのウエスト部分をくるくると巻き上げて、スカート丈を膝上になるように短くした。ナチュラルメイクをすると、真衣は見違えるように可愛くなった」
空は涙を拭い、俺を見上げた。
「真衣は鏡を見ながら笑ってたんだ。真ちゃん……、あたし達が真衣を追い込んだのかもしれない」
◇
――翌日――
真衣は学校に来なかった。
朝のホームルームで、担任がクラスメイトにこう告げたらしい。
――『平加さんが昨夜お亡くなりになりました。葬儀はご家族だけでされるそうです。ご家族の悲しみはとても深く、学校の生徒や保護者の弔問はご遠慮ねがいたいとのことです』
空も春希も鈴も、昨日『もう殴らないでって、お父さんに言ってみるよ』そう言った真衣の言葉を思い出し、三人はそのまま教室を飛び出した。
先生の止める声もクラスメイトの声も、三人の耳には入らなかった。
学校を飛び出した三人は、駅前でタクシーに飛び乗った。
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