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「あたしの父もすぐに手が出るんだ」


「空のお父さんも?」


 俺は驚きを隠せない。


「あたしは殴られたことはないけど、幼い時に実母が父に殴られていた光景が、今でも鮮明に残っている」


「……空」


「そして父は……。今も気にいらないことがあると、たまに礼に手をあげる。だから父が愛人のところに行って、あたしは内心少しホッとしてるんだ」


 誰もが羨む白亜の豪邸の中で行われている家庭内暴力。これは決して許されることではない。


「真衣のお母さんは父親の暴力を知っていたんだ。それなのに助けてくれなかった。真衣は『あの家で私はいらない子なんだ』と、何度も繰り返した。あたしは真衣の話を聞きながら、自分を見ているようだった……」


 空の心の闇が、ハッキリと何なのかわかった気がした。大人を信じることが出来なくなった理由は、父親の家庭内暴力。


「真衣は……小学校の時も虐められてた。中学校に進学したあとも、それは継続していてみんなからハブかれていた。でも中三になって、あたし達と一緒にいることで虐められなくなった。真衣は亡くなる前日に、あたし達に『友達になってくれてありがとう』って言ったんだ。あたし達は真衣をパシリにしていたのに、それなのに『ありがとう』って……」


 空はしゃくり上げて泣いた。

 自分のしてきたことを悔い、俺の前で号泣した。


 俺は宥めるように、空の背中をゆっくりと擦る。

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