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 昨日、屋上でメイクをしていた春希と鈴は、イタズラ半分に真面目でおとなしい真衣にもメイクを施そうとしたらしい。


 その時、三人はある事実に気付いた。


「真衣は眼鏡と髪の毛で隠していたけど、右目の横に青痣があったんだ」


「青痣?」


「あたし達は誰にやられたのか問いただした。でも、真衣はなかなか答えなかった。『誰なんだよ!』って、春希が詰め寄ったら、真衣は『……父親』だと答えた」


 真衣は自分は母親の連れ子だと話し、兄と姉は父親の連れ子。二人とも国立大学の医学部生。優秀な二人の兄姉と比較され、真衣の一学期の成績が落ちたことを理由に、前日父親に殴られた。


「あたし達は家庭内暴力だと思った。真衣にそのことを突きつけると、唇をキュッと噛み締めた。あたしは、真衣の制服のブラウスを捲った。真衣の体には、無数の痣があったんだ」


「……そんな、ずっと義父から暴力を受けていたのか?」


「真衣の母親と再婚してすぐ真衣への暴力は始まったらしい。真衣は父親を非難するわけでもなく『私が悪いの、全部私が悪いの……』って、泣いた……」


 空は怒りに声を震わせた。


 実子ではない娘に、暴力を振るう父親。

 考えただけで、沸々と怒りがわき上がる。

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