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「大嫌いな父親の財力と権力に頼り、空は胡座をかいてるだけなんだよ」
「……そんなことない」
「自分でもわかってるんだろ。そんなことをしても、楽しくないだろ。学校で煙たがれるだけだ。友達もできないだろう」
「友達?そんな面倒くさいものはいらない」
「どうしてだよ?空の年頃なら友達と一緒にいる時が一番楽しいはずだ。友達は空が困った時に助けてくれるし、話も聞いてくれる」
「バッカみたい。みんな自分が一番大事なんだよ。誰も他人を助けたりしない」
「空は寂しい人間だな。自分が心を閉ざすから、相手も心を閉ざすんだよ。空が心を開けば、相手も心を開く」
空は俺の話を無視して、部屋の壁に設置していたダーツで遊び始めた。ダーツは的の中心に命中する。
「友達なんか形だけだよ。虐められたくないから、誰かと一緒にいる。ただ、それだけだ。本心なんか誰も見せない。誰かが泣いていても傍観者になるだけ」
「虐め……。まさか、空はやってないよな?」
「バカバカしい。あたしがそんな幼稚なことをすると思ってるの?ねぇ真ちゃん、ダーツの勝負しない?あたし、上手いんだよ」
「ダーツ?」
「真ちゃんの投げたダーツが、一発でど真ん中に命中したら、明日からメイクをやめる。あたしがもし勝ったら、真ちゃんが家庭教師をやめる」
家庭教師をやめる?
俺はダーツは得意じゃない。
的の中心に当てるなんて、無理に決まってる。
一発勝負で家庭教師をクビになっては、礼さんとの約束が守れないよ。
でも挑まれた勝負に、負け犬みたいに尻尾を巻いて逃げることは出来ない。
「よし、いいよ。その勝負、俺の勝ちだ」
「ふん、勝てるわけない」
俺は空からダーツを受け取り、的を目掛けて放った。俺の手から離れたダーツは、真っ直ぐ的の中央を貫いた。
空は唖然とし、数秒間呆然としていた。
どうやら運は俺に味方したようだ。
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