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 夕飯の後、狭いキッチンに二人並んで食器を洗った。奈央は二人で洗いたいから食洗機はいらないという。


 泡だらけの手でスポンジを持ち、キュッキュッと皿を洗いながら、俺は奈央の耳元に唇を近づける。


「奈央、キスしていい?」


「うん」


 食器を洗いながら、顔を近づけキスをする。何度もキスをしている内に感情が昂ぶる。


「奈央。食器はあとで洗おう。先にシャワー浴びない?奈央の体を洗ってあげる」


「やだあ。食器片付けてからね」


「じゃあ、食器は俺があとで洗っとくからさ」


 泡だらけの手で奈央を抱き締めると、奈央は困り顔で小さな悲鳴を上げた。


「きゃっ、ヤダヤダ。真ったら、洋服が泡だらけだよ」


「それは大変だ。早く洋服を脱いで洗濯しないと。奈央の顔も体も蟹みたいに泡だらけだよ」


 奈央の鼻の頭に洗剤の泡をつけると、奈央は笑いながら俺の頭に泡をつけた。


「やったな」


 俺達は幸せだった。

 互いのことを愛していたから。


 年の差はあったけど、これから先も奈央以外は愛せないと思っていた。


「一緒に風呂に入ろう」


「泡だらけの蟹さんがいるから、しょうがないな。食器あとで片付けてね」


「了解しました」


 奈央をひょいと抱き上げキスをする。

 小さな水音が、鼓膜を擽る。


「真、大好きだよ」


「俺はもっともっと好きだよ」


 何度も重なる唇は、次第に体を熱くする。


 たとえ何があったとしても、揺るがない愛情。どんな時も、奈央は俺の傍で笑っていると、そう信じていた。

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