【4】幸せの基準
礼side
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約束通り、西本さんは家に来てくれた。私はホッと胸を撫で下ろす。
本宮との幸せな結婚生活はわずか半年で、崩壊してしまった。
資産をもて余している本宮は、交際中から女性関係も派手だった。
『礼だけを愛している。もう他の女とは縁を切る。別れるよ』
そう言ってくれた本宮の言葉を、私は信じたのに。
わずか数ヶ月で愛人が発覚した。二十代半ばの若い女性。愛人は本宮の秘書だった。本宮は秘書にマンションを買い与え次第に帰宅しなくなり、同棲を始めた。
本宮と離婚をして、この家を出て行くという選択肢も私にはあった。
だけど、私の気持ちを踏み留まらせたのは、空の存在だった。
空はまだ十五歳。空が五歳の時に、空の実母は本宮の会社の若い社員と駆け落ちをした。相手はアメリカ国籍の男性だった。その後、空はロサンゼルスで七年間も家政婦と二人きりで暮らした。
本宮は育児放棄をし恋人と暮らしていたからだ。空は五歳から孤独と戦ってきた。
親の愛情を知らずに育った空は、どこか冷めていて、大人に対して攻撃的だ。
体は成長し大人に近づいていても、心は親に捨てられた深い悲しみを背負い、人として成長できずにいる。
私はそんな空を残して、この家を出ることが出来なかった。
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