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「あーあ、バカだね」


 空が俺を見てあざ笑う。


「何がだよ?俺、何かマズいこと言ったかな」


「パパのことを話すなんて無神経にもほどがある」


「何でだよ?」


 俺には、何故夫のことを話してはいけないのか、理解ができない。


「パパには愛人がいるのよ。今は別宅に入り浸ってるの。家にはもう何ヶ月も帰って来てないんだ。この家はあたしと礼の二人なんだよ」


 あ、あ、愛人!?

 こんなに綺麗な奥さんがいるのに!?


 知らなかったな。

 俺……マズいことを聞いたかな。


「でも、礼も似たようなものだけどね。パパには婚約者がいたのに、婚約解消して礼と結婚したんだから。パパは奪い合うほどの男じゃないのに。そんなことをするから自分も同じ目に合うんだよ。略奪結婚しても、愛人に略奪されたら終わりだよね」


 十五歳の子供が、大人の事情を平然と語る。


 あの社長が、略奪結婚?まさか?

 愛人と浮気しているような夫だ。きっと婚約者がいながら、社長の美しさに目移りしたに違いない。

 

 空の投げやりな口調や態度は、家庭環境からきているのかな。


 実父は愛人と暮らし、義理の母娘がこの豪邸で暮らしているなんて。殺伐としていても不思議じゃない。


 だから空は、攻撃的なのに時折寂しい目をするのかな……。

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