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「二人とも珈琲が冷めないうちに召し上がれ。空はブラックなのよ。西本さんは?」


「俺もブラックです」


「二人とも味覚は大人なのね。私は砂糖もミルクもたっぷり派よ」


 社長が一番ブラック珈琲が似合いそうなのに?


「この家、こんなに広いのに家政婦さんはいないのですか?」


「そうなの。空がね、勝手に解雇しちゃうのよ。空が意地悪ばかりするから、みんな辞めてしまうの。だから私が家事をしてるのよ」


 社長が意地悪するんじゃなくて、空が?

 

 社長が家事をしてるなんて、想像つかないよ。執事や家政婦を扱き使っているイメージしかない。


「だってうざいから」


「ほらね。『うざい』ってこの子の口癖だから、西本さん気にしないでね」


 うざいが口癖なのか。

 確かに『うざい』の連発だよな。


「それにここはMILKYじゃないんだから、社長って呼ぶのはやめてね」


 ていうか、『社長』の方が呼びやすいのに。

 社長のこと、何て呼べばいいんだよ?

『本宮さん?』『お母さん?』『礼さん?』急に言われても選択肢に困る。


「ご主人の帰宅はいつも遅いのですか?」


 俺の問いに二人は顔を見合せ、すごく気まずい顔をした。


 俺……何かまずいこと言ったかな。

 地雷踏んだ感じ?


「あと、一時間勉強頑張ってね」


 社長は俺の質問を聞き流すと、スッと背を向け部屋から出て行った。

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