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長文を読み終えると、空はペラペラと和訳しパタンと問題集を閉じて、俺を見てこう言い放った。
「終わりましたけど、まだ何か?」
「英語の発音も和訳も完璧だな」
「当たり前でしょ。あたしはロサンゼルスで生まれて、十二歳までロサンゼルスで暮らしていた帰国子女だ。このあたしに中学生英語を教えるなんて無意味だよ。なんなら、あたしが真ちゃんに教えてあげようか?英語も恋愛も真ちゃんより偏差値高いかもよ」
「………っ」
長い睫毛をユサユサと数回瞬きし、空はニヤリと口角を引き上げて笑った。さっきまで悪態をついていた顔とは異なり、その妖艶な口元に俺は十五歳だと言う事を忘れ、ドキッとする。
「くくくっ、真ちゃん、今、エッチな妄想したでしょ。男ってコレだからヤなんだよ」
「……エッチな妄想なんかしてないし。英語は必要なさそうだな。科目変更は認める」
「あたし、中学生レベルじゃやる気になんないの。どの科目も家庭教師なんかいらない。即ち、真ちゃんはいらない」
「ていうか、真ちゃんて呼び方はやめろ」
「何で?西本先生って呼ばせたいの?あたしの方が真ちゃんより勉強出来るし、先生っていうのは、あたしより実力が上回ればの話だよね。ねぇ、真ちゃん?あたしと英語勝負しても勝てないでしょ?あたし、小説の翻訳も得意なんだけど」
小説の翻訳!?まじか。
俺は進学塾の講師も数学担当だし。
英語は話せるが完璧ではない。
空がロサンゼルスで生まれ育ち、バリバリの帰国子女で、ルミナ聖心女学院大学附属中学校だなんて知らなかったし。
親の力で名門私立中学校に入学したと思っていたが、まさかこんなに優秀だったとは。
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