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「はい、十分経過、残り二十分」
空は机の抽斗から赤いマニキュアを取り出し、長い爪に塗り始めた。マニキュアの匂いがツンと鼻を突く。
「はい、十五分経過、残り十五分。もし、零点なら家庭教師の日にちを週四回に増やすから。土日も返上になるかもな。俺は週六日でもいいけど。収入が増えて生活が楽になる」
「はぁ!?週六日!?気は確か?」
「はい、二十分経過。残り時間、十分だ」
「………クソッ」
空はシャーペンを掴み、スラスラと問題を解き始めた。それは俺の想像を遥かに超えるスピードだった。
「はい、終了」
俺のかけ声と同時に、空は数学の問題集を俺の顔面に放り投げた。
俺は問題集を左手でキャッチし採点する。三十分の問題をわずか十分で解いた空の得点は、驚くことに全問正解だった。
コイツ、もしかしてかなりの秀才?
「百点だ」
「当然だ。だから言っただろ。そんなチョロい問題、十分あればじゅうぶんなんだよ。真ちゃん、ルミナ聖心女学院大学附属中学校をナメてんの?真ちゃんの卒業した公立中学校と偏差値一緒にすんな」
私立中学校だと聞いていたが、都内でも偏差値が高いルミナ聖心女学院大学附属中学校だったとは。
どうやら選ぶ問題集を間違えたようだ。
「数学の実力はわかった。次、英語の問題集の長文を声を出して読んでみろ。それと和訳な」
「は?まだやる気?」
「早く読め」
空は脚を組んだまま英語の問題集を広げると、片手で持ち長文をスラスラ読み始めた。流暢な発音はまるで外国人講師の英語を聞いているみたいに完璧だ。俺よりも断然上手い。
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