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「君は幸せ者だよ。こんな環境で暮らせる人なんて、そうそういない。親に感謝して、毎日暮らすんだな」


「はあ?親に感謝?バカバカしい。どの親に感謝するの?何も知らないくせに、偉そうに語ってんじゃないよ」


 俺を威嚇し怒鳴り声をあげる空は、大人びた容姿をしていてもやっぱりまだ中学生だ。


「君が今ここでそうやって悪態ついていられるのも、立派な両親がいるからだよ。君の力だけでこの暮らしが手に入ると思っているのか?」


「……まじでうざっ!ていうかやっぱ帰れ」


 空は机の椅子をくるりと回し、俺に背中を向けた。


「じゃあ、問題集の55ページを開いて、実力テスト開始だ」


「は?今の聞こえなかった?帰れって言ってんの!」


 俺は空の言葉を完全にスルーし、腕時計に視線を落とした。


「はい、時間計るからな。制限時間は今から三十分。よーい……」


「は?」


「はじめ!」


「バカじゃない。誰がやるもんか……」


「出来ないのか、成る程な。君の実力はナイと」


「バカにするな。こんなチョロい問題十分で出来る。だからやる気にならないんだよ」


「ふーん。はい、五分経過」


 空は口を尖らせ、むくれているが明らかに動揺している。


「誰が……やるか……」


 やっぱり思った通りだ。

 虚勢を張って大人を突っぱねているに過ぎない。

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